生後すぐからステロイドを塗布されていた半年のお子さんが受診されました。出産後すぐにおむつかぶれにステロイドを塗布されましたので、このお子さんは今までステロイドを塗布しない時期がなかったのです。全身とびひ状態でこれはMRSA(抗生物質耐性の黄色ブドウ球菌)によるものではないか、と思いました。
細菌培養の検査をしてMRSAに効果のあると思われる抗生剤の内服を含め、抗アレルギー薬とかゆみ止めの内服と、スキンケアーで治療しました。細菌培養の結果はやはりMRSAでした。投与した抗生剤はそのMRSAに効果がありました。抗生剤を内服しているときには症状は改善しましたが、リバウンドを発症しました。全身のとびひ状態は悪化し、また一定の期間をあけて抗生剤の内服をしました。そうしますと症状は改善しましたが、また悪化を繰り返しました。
やがてリバウンドは改善しましたが、MRSAによるとびひ状態は何度も繰り返し、半年間続きました。とびひ状態が繰り返す理由は、生後すぐからステロイドを塗布されていて、免疫機能が落ちているからです。そのことを説明しましたら、お母さんはよく理解してくれました。そして改善を信じて治療を続けてくれました。
その後かなりとびひ状態になる頻度は減ってきました。しかしMRSAはまだ消えません。そのまま治療を続け1年たちました。するとようやくMRSAは消え、とびひ状態になることもなくなりました。その後は順調で初診から1年半後に治癒しました。ステロイドを使用したのは半年ですが、治癒には1年半かかったわけです。
その間、治療を信じてくれたお母さんに感謝いたします。最初からステロイドを使用しなければこういうことにはならなかったと思います。おむつかぶれにはステロイドでない外用剤があります。その後のアトピー性皮膚炎にも、すぐ私の所に受診していただければMRSAのとびひ状態にならずに速やかに改善したと思います。お母さんの治療に対する信頼で治癒したお子さんの例です。